カーブスFC事業でのシニア人材活用事例インタビュー

千葉県我孫子市でカーブスのFC事業(女性のためのフィットネス)を展開している株式会社KSプロジェクトでは、現在、72歳のスタッフ(Mさん)がインストラクターとして活躍しておられます。本日(2017年6月27日)は、同社の川村専務より、いわゆる「シニア人材」を活用することとなったいきさつや、採用後の苦労話、これからの高齢化社会におけるシニア人材活用に対する考え方についてお聞きしました。

 

 

語り手 株式会社KSプロジェクト 専務取締役 川村 忍さま

聞き手 柏市生涯現役促進協議会  事務局 柴谷哲弥、秋道和子

 

聞き手)シニア人材を活用しようと考えたきっかけは?

語り手)カーブスの業務時間は午前9時半から午後7時半まで(午後1~3時は休憩時間)なのですが、パートの中核となっている30~40代の子育て世代の方々の午後7時半までの勤務が難しくなってきたのです。理由は、家事や子育てとの両立が難しいからです。そこで、午後5時以降は、子育てがひと段落した50歳以上の女性を採用してはどうかと考えたのです。

 

聞き手)現在、インスタラクターとして活躍中のMさんを採用した経緯は?

語り手)Mさんは、もともとカーブスの他店舗のメンバーだった方ですが、カーブスのスタッフに憧れて「自分もカーブスのスタッフのようになりたい」とやってこられました。他店舗の経営者からのご紹介だったのです。

 

聞き手)なるほど。それにしても、いきなり70代の方を採用するのは勇気が必要だったのでは?シニア人材に関してよく言われるネガティブな面について抵抗はありませんでしたか?

 

語り手)カーブスは、「30分フィットネス」というキャッチフレーズでメンバーの方が健康作りのために運動しに来られる場所ですが、実は、運動するだけではなくメンバーさんたちのコミュニティーの場にもなっているのです。スタッフはメンバーの皆さんとのコミュニケーションを大切にしており、メンバーさんもスタッフに会いたくてお見えになるという方が大勢いらっしゃいます。Mさんは、カーブスのスタッフという点ではもちろん新人ですが、一人の女性としては多くの経験を積んでこられた方で、メンバーさんとの密なコミュニケーションをとるという観点では申し分のない方でした。でも、まさか70代の方を採用することは考えていませんでしたが・・・(笑)。

一方で、インストラクターの仕事は運動器具の使い方の説明をしたり、実際にスタッフが器具の使い方のお手本を見せる場面もあり、体力的には決して楽な仕事ではないこと、器具の正しい使い方、ストレッチの仕方などのアドバイス、入会・退会時の説明、電話での応対の仕方など、膨大なマニュアルを覚える必要があることを伝え、「それでもやっていけますか?」とお聞きしました。それでも、Mさんは「大丈夫です」とおっしゃったので、採用に踏み切りました。

 

聞き手)採用後に苦労したことや配慮したことはありましたか?

語り手)当社では、社員であれパートであれ、最初の3カ月間は試験期間を設けています。その間にマニュアルを覚えたり基本的な対応を身に着けてもらうようにしているのです。Mさんの場合は、もともとメンバーだったわけですが、器具の使い方ひとつ取って見ても、メンバーとしてのレベルには到達していても、スタッフとして必要なレベルではない点も多々あり、厳しく指導してきました。また、試験期間も3カ月では難しい事柄については「じゃあどのぐらいの期間があれば覚えられるの?」と確認しながら、ヤル気を潰さないように柔軟に対応したこともあります。

 

聞き手)そんな中でも、一番苦労されたことは何ですか?

語り手)Mさんが一番苦労したのは、パソコンですね。仕事の中ではパソコンを使うこともあるのですが、Mさんは当初はパソコンが使えなかったのです。でも、シニアだからパソコンが使えなくてもいいという訳にはいきません。そこで、本来の勤務時間より1時間早く事務所に来て、いちからパソコンの使い方を指導することにしたのです。その1時間はもちろん給料は払えませんが、「それでも、やれる?」って聞いたら、Mさんは「やります」と言ったので、ウチの社員が約10ヶ月かかってやっとパソコンで文章が書けるぐらいまで指導しました。本人もよく頑張ったと思います。

 

聞き手)なるほど。いろいろ配慮して来られたのですね。では最後に、これからシニア人材を活用する事業者へ何かご助言いただけますか?

語り手)働くシニアの方にとっての居場所を作ってあげることが重要だと思います。そのためには、(その人の良い面を)認めてあげるということが大切ですね。

業種や規模による違いがあるので一概には言えませんが、当社では、カーブスのメンバーの多くが中高年の方ということもあって、お客様とのコミュニケーションの中にMさんの人生経験が上手く生かされて、若いスタッフではできない親しみや共感・信頼関係が生まれているように思います。

 

聞き手)シニアの方は、豊富な経験を積んでこられた一人の人間として若い人には無い良さがあるはずですから、それをきちっと認めたうえで職場での融和を図りながら活躍の場を整えてこられたことが、現在のようなシニア人材活用の成功に至った秘訣というわけですね。業種が違っても、参考になる点が多々あったように思います。本日は、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

(了)